『厄介者のススメ ジョン・ウォーターズの贈る言葉』
あつカマ通信の7回目、今回ご紹介する『厄介者のススメ ジョン・ウォーターズの贈る言葉』は、発売間もない(2022年8月26日発行)新書です。
映画監督としてカルト的な人気を誇るジョン・ウォーターズは現在76歳(2022年)、1960年代から徹底して悪趣味映画を作り続け『ゲロの王子』の異名を取るほどの活躍をし、映画界に大きな影響を与えました。
伝説的なドラァグクイーン、ディヴァインと組んだ諸作品、例えば食糞シーンで知られた『ピンクフラミンゴ』は、日本にドラァグクイーン文化が流入した平成元年(1989年)よりも前に日本公開され、後にリバイバル上映やDVDソフト化もされるなど、今も根強い人気を獲得しております。
世の中の価値基準に徹底して抗い続けた鬼才は、米国にあって芦田多恵やジル・スチュアートを輩出し、美術界の最高学府と名高いロードアイランド・デザイン学校に、名誉美術博士として迎えられました。
そして本書に収録されたのが、2015年同校の卒業式における、卒業生に向けたウォーターズによる祝辞、その全文の和訳なのであります。
本書の原題は『Make Trouble』、騒ぎを起こせ!といったところでしょうか。
一見しただけでは、反体制的なアジデートに感じられますがさにあらず。
かつては大学を追放されながらも信念を貫き、学生に祝辞を述べる立場を得た人物の言葉は、強かな裏付けを以て、具体的に若人の旅立ちを祝福しています。
また、日本の美術家にしてドラァグクイーンのヴィヴィアン佐藤による寄稿もあり、あつカマ資料館としては必見の書であります。
稀代の映画人ジョン・ウォーターズと、本書を製作した方々の慧眼に敬意を表して、本稿の終わりといたします。
(文中敬称略)
ラッキー・リー
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